Something New...
久しいね、皆さん。元気にしてましたか?
僕は今、会社の研修で山形県に来ています。社会人としての生活が始まっては二週間、実はまだ一日半しか働いていません。
事の発端は社会人として初めての週末が明けて訪れた月曜日の昼下がりだった。東京を出発するところから書いていくからざっと読んでいってほしい。
2022/3/31
その日は慌ただしい朝だった。七時前に起きた僕はいそいそと部屋を空ける準備を始めた。いつも通り鏡を張り付けて洗面台として使っているシンクで身支度を整えた。宅配で送らなかったヘアアイロン、コンタクトレンズや髭剃りをリュックに詰めた。服を着替え、部屋中のコンセントからプラグを抜いていった。換気扇と冷蔵庫にだけ電力を供給する状態にして、一旦部屋を出た。ガスの元栓を閉めて、自転車を抱えて部屋に入った。新聞紙をタイヤが触れる床に敷いて、自転車をそこに置いた。部屋の最終チェックと、持ち物の最終チェックをして部屋を出た。
「行ってきます。」日差しに照らされた誰もいない部屋のドアに向かって呟いた。ゴミの日を無視してゴミ袋を出したゴミ置き場に大家さんがいた。「おはようございます。」そう声をかけると、「今日から?」と返ってきた。「そうです、ゴミ、すみません。」そういうと大家さんは「事前にお話しいただいていたので大丈夫ですよ、いってらっしゃい。」と言った。「ありがとうございます。いってきます。」こうして大家さんと別れてバス停へと向かった。
携帯を確認するとギリギリに部屋を出たのでバスを一本乗り逃した。慌てて次のバスを調べた。まだ余裕で空港に到着するタイムスケジュールだった。
バスに乗ると意外に人がいた。じわじわ上がっていく室温に薄っすら汗を浮かべながら無心で空港を目指した。バスを降り、電車に乗り、電車を降り、また電車に乗った。空港行の車両からの景色は爽やかなものだった。東京湾に浮かぶ埋め立て地の端を目指して進む車窓からは、日差しに照らされて煌めく海面と、都心には似つかわしくない木々が確認できた。大きなポンジュースの看板を過ぎるともう空港だった。
搭乗口Dで初めましての同期とお世話になっている採用担当の方と合流し、すぐに搭乗手続きが始まった。圧倒言う間に眼下に摩天楼が広がった。
四十と幾分かのフライトの後、眼下に田畑が広がった。ゴルフ場を彷彿とさせる空港を後にし、バンにパンパンになりながら数か月お世話になる仮住まいへと向かった。この時点で、一人、大阪からの乗り換えに失敗し空港に置き去りになった後の同居人がいるのだがその話はいつかしよう。
バタバタと買い出しを済ませ、あっという間に晩御飯となった。会社の金で焼き肉を食らい、ホクホクで住居へと帰宅した。今までにないくらいしっかりと寝つけた。僕にもまだ責任感と言うやつが残っていたみたいだ。
2022/4/1
明くる金曜日、入社式に向けて身支度を整えた。同居人ともう一人と喋りながら会社へと向かった。
待ち時間の多い一日だった。辟易として帰宅した後三人でしゃべくった。
2022/4/2
土曜日、初の週末、同期で買い出しへ向かった。各々必要なものをしこたま買い込み、夕飯を食べた。
2022/4/3
日曜日、僕は歩いて海へと向かった。とんでもない距離だった。
水面の美しさとは正反対な荒々しい潮風を全身に受け、帰宅した。
夜は同期と鍋をした。笑いの絶えない鍋だった。
2022/4/4
そして問題の月曜日、出社二日目だ。その日は曇りで肌寒かった。
確定拠出年金の説明を受けている間、僕はとにかく寒かった。薄手のスーツだし仕方がないと思った。部屋の温度を上げてもらうように頼んで室温が上がった。これで幾何かマシに、ならなかった。寒い。とにかく寒い。
寒さに耐えていると昼食の時間になった。弁当をレンジで温めスープに口をつけた。これで体が温かく、ならなかった。おかしいぞ。
そう思い、総務部で体温計を借りた。簡易ベッドに横になりながら体温計が鳴くのを待った。結果は38.0℃だった。疲れたんだろうと御託を並べながら総務の人に報告をした。早退することになった。
部屋へ向かう道中の自販機でボタンを連打してスポーツドリンクを買いだめた。会社の人に連絡をした後、布団に横になった所から記憶がない。
2022/4/4
次の日、同居人が預かってきた抗原検査キットにて陽性を確認した。
そう、僕は研修地に飛び立った四日後にコロナウィルスによって早退したのだった。
これが社会人生活二週間にして未だ一日半しか働いていない男の身に起きた事の顛末である。出発前のPCR検査と抗原検査の結果は一体なんだったのだろうか。どれだけ気を付けていてもどこで感染するかわからないというのは恐ろしいウィルスの性質である。
2022/4/13
現在、体調は良好である。今月の給料出んのかな。
なんにせよ、一つだけ言えることは俺にもう怖いものなどないということだ。
どうか皆さんも気を付けて。


